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どうしたら定着させられる?

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人材の定着という課題も、基本的に日本人と外国人に違いはありません。日本人の場合を考えてみてください。早期の離職原因で多いのは、1.待遇に対する不満 2.仕事がきつい 3.職場の人間関係 の3つですね。

外国人の場合は、基本は同じでも、外国人ならではの、特に注意しなければならない点があります。その第1は日本語能力の不足や文化の違いが原因の、さまざまな誤解です。典型的な例で良くあるのは、「ばかやろう!」とか「あほんだら!」といった、上司、監督者、先輩の叱責のことばです。発言した本人は軽い気持ちだったかもしれませんが、外国人は、こうしたことばのニュアンスを、日本人以上に強く受け止めます。絶対にNGです。

第2は価値観の違いです。現場で良く耳にするのが、「外国人はちゃんと働かないのに、権利ばかり要求する」という雇用者側の不満です。働く姿勢に関する日本人の価値観は、「1人前になるまでは文句を言わず、一生懸命働く」というものですが、外国人は、見習いだろうが半人前だろうが、お金や休みの権利はきちんと主張します。それが世界的な標準です。日本人の価値観が間違っていると思ってください。前にも言いましたが、ほっておいても外国人材が日本を選ぶ時代は終わりました。「郷に入れば郷にしたがえ」は、もう通用しないのです。

最後に、日本の制度についての無知のせいで、外国人が不満をため込むケースも結構あります。その代表例は、年金保険料の天引きでしょう。「自分は、いずれ母国に帰り、年金をもらうわけではないのだから、年金保険料を払うのは理屈に合わない」と思っている外国人が多いです。それに便乗して社会保険料を払わない企業がたまにあります。しかし2021年の法律改正で、外国人が日本で5年就労した場合、その間に納付した厚生年金保険料は、帰国後に全額返還されるのです。どうかその制度を、彼らに教えてあげてください。残念ながら会社負担分は戻りません。

外国人就労者の定着のためには、雇用側の企業が、外国人のことばや文化のハンディに、思い切って歩み寄るという姿勢が、とても重要だと思います。「日本語もできないのに、日本人と同じあるいはそれ以上の負担がかかる!」という不満を良く耳にしますが、経営者が高みに座ったまま、外国人が這いあがってくるのを待っているのでは、皆、逃げてしまうでしょう。企業経営の危機を乗り越えるために、経営者の発想の転換が求められています。